連れて来られたのは田舎の割には大きくてきれいな警察署だった。
俺は生まれて初めて取調室などという部屋に入った。

先程の警察官二人のうち一人が俺の向かい側に座り、もう一人は隅にある椅子に座った。

「じゃあ早速だが、加賀見章悟さんで間違いないね?」

「はい」

警察官は他に俺の年齢と現住所を言って俺に確認を求めた。
すべてを肯定すると本題に入る。

「さっきも言ったがね。真瀬洋一さんがアンタに殴られて怪我をしたと被害を訴えとる。これは事実かね?」

「違います。俺は真瀬さんを殴ったりしてません」

「でもねぇ。ちゃんとした医者の診断書が出とるんだわ。顔に殴られた際にできた傷がある。医者の話では時系列的にも今日の午後だと言うんだな」

それは…殴られて傷ができたのは事実だから。
でも殴ったのは俺じゃない。

「あの…真瀬さんが俺に殴られたと言ってるんですよね?」

「そうでなきゃアンタに来てもらったりせんでしょうが」

そうだよな…。
でも真瀬はなぜそんな嘘を?
俺が気に入らないとしても、俺以外に迫田と門脇も現場にいたんだ。
あの二人が事実を知っているのだから冤罪だとすぐにわかるのに。

「あの…真瀬さんが殴られたのは事実です。でも、殴ったのは俺じゃありません」