頭はそれ以上問い質さず、その日の業務は終了した。

更衣室で着替えをし、皆が出て行ったのを確認してから俺は迫田に尋ねた。

「迫田さん…真瀬さんは…」

「加賀見。アンタもあんときのことは黙っといてくれんか?余計ないざこざを知られとうない」

「それは…そのつもりです。でもあの…真瀬さんは…前からあんな感じなんですか?」

「ん?どげいう意味だ?」

「その…はっきり言って、俺のせいで雰囲気が悪くなってるんじゃないでしょうか…」

「そげんことはねぇ。まぁ、アイツはアンタが気に入らないんかもしれんが、アイツのあんな態度は前からだけん。アンタのせいじゃねわな」

「…それなら、いいんですけど…」

「アンタは今までどおり、一生懸命やってくれればええ」

「はい…」

離れに戻り、一息つく。
今日の顛末は頭から親方の耳に入っているかもしれない。
もし、親方から何か聞かれたら俺は…
迫田の言うとおり黙っているしかないのだろうか。
それとも。
親方にすべてを話し、采配してもらうほうがいいのだろうか。
考えが纏まらないまま、俺は動けずにいた。

玄関が開き、俺を呼ぶ雪穂の声で現実に戻った。

「加賀見さん?晩ごはんができましたよ?」

玄関先で雪穂の声がし、慌てて炬燵から出た。