食事もワインも俺の睨んだとおり。
なかなかのものを提供してくれる。

それもさることながら。
食事中に話してみると、折原はその軽薄そうな見た目と異なり話題も豊富で飽きさせない話術を持っていた。
うちの会社が営業に起用するのだからそれなりの人材ではあるだろうが。
折原は間違いなく適材適所だと思った。

アルコールの効果で少し砕けた俺は折原と意気投合した。
軟派な見た目に反して考え方は意外と硬派だった。
何年もずっと一人の女を想い続けているという話には正直恐れ入った。
なぜそのままにしているのか尋ねると、不毛な恋なのだという。
そのときの折原の表情は辛そうで、俺はそれ以上何も聞けなくなってしまった。

俺の恋愛経験を折原は知りたがったが。
未だトラウマになっている話だけはどうしてもできなかった。
まだ完全に吹っ切れていない自分が情けない。
こればかりは時が解決してくれるのを待つしかなかった。

今は特定の彼女がいないと確認した折原は、今後合コンの人数合わせで声を掛けてもいいかと聞いてきた。

「合コン」に「人数合わせ」。
思い出したくもない俺にとってはNGワード。
だがいつまでも囚われていてはいけないと重々承知していた。
いつかは…ここから抜け出さなければならない。