「若いといえば若いかもしれませんね。でも三十ですから」

「三十ならまだまだ若いわの。ワシらからすればまだひよっこだの」

「それは間違いないです」

須野は豪快に笑う。

「まぁ、加賀見は若いけども一生懸命やっとるでな。先が楽しみだわ」

「そんな…俺なんてまだまだです…」

「その謙虚さがええんだ。慢心するとろくでもないことになぁけん」

「それだけは肝に銘じてます」

「加賀見はお嬢さんとはええ仲なんか?」

突然の質問に飲みかけの缶コーヒーを吹き出しそうになる。

聞いたのは炭屋の宮崎だ。

「なんです、急に?」

「いやだって…皆、不思議に思っちょるがの。お嬢さんがなんも関係ないヤツを連れてくうかの?」

「それは…雪穂さんの名誉にかけて言いますが、ほんとに関係ないんです。仕事で知り合いになった雪穂さんからこちらの話を聞いて…俺が無理矢理お願いしただけなんです」

「そうかのぅ…」

探るような瞳で俺を覗き込む。

やっぱり俺の彼女に対する気持ちは、周囲にも否応なしに伝わってしまうのだろうか。
それなら。
俺は正直に話したほうがいいのかもしれない。
この人達とはこれからもずっと、仕事で関わっていくのだから。