「自分を…変えたいんです…」

「ん?」

「流されて生きるのではなく…。自分で選んだ道を…しっかりと歩んでいきたいんです…」

「……」

この沈黙は何を意味するのだろう。
俺には所詮無理だと思っているのかもしれない…。
でも俺は…
尻尾を巻いて逃げたくはない。
足掻いて足掻き続けたい。

「わかった…。アンタの気が済むまで…やってみたらええ…」

「親方…」

「はっきり言うとく。ほんにえらいぞ。仕事は当然だが生活習慣も…。アンタの思いもせんようなことが次々起こる。それでも…やんのだな?」

「…やらせてください…お願いします…」

「わかった…」

そこからはまた座学に戻った。
十八時を過ぎたころ、親方が今日はここまでと言い、終了した。

「ありがとうございました」

「一旦離れに戻るか?もうちょっとで晩飯だが」

彼女を手伝いたい気持ちがないわけではないが…
彼女の仕事は彼女にやらせるという方針のようだから。
手伝わないほうがいいのだろう。

「離れに戻ります」

「うん。ほんなら半ごろまたおいで」

「はい。ありがとうございます」

離れに戻り、炬燵のスイッチを入れる。
誰もいない部屋は寒々としていて冷えきっていた。
本当に信じられないくらい寒い。
カイロがいるかもしれない。

まだ暖まりきっていない炬燵に入りながらそんなことを思っていた。