「親方…」

「ええ心懸けだな。現場で実践できんと意味はねぇが」

「頑張ります」

「修行はもちろんだが…。チームワークも大切だ。アンタだけが浮き足立っていればチームワークが乱れる。同僚と上手くやっていくのも大切なんだ」

「それは…、そのつもりです」

「アンタは…まだよくわかっとらんと思うが…田舎の人間てのは僻み根性のモンが多い。僻み、妬み…特に地元の人間以外にはなかなか腹を割ったりせん。そういう意味でアンタは…普通よりやりにくいかもしれん」

今日の一幕でなんとなくそれは感じた。
真瀬が俺をあまりよく思っていないと。
今日はたまたま真瀬が思っていることを偶然耳にできただけで。
他のヤツらも同じように思っているかもしれない。

「加賀見…。だからといって疑心暗鬼になる必要ないけん。アンタが一生懸命やれば必ず…わかってくれるモンが出てくる。それまでは…くたびれることもあぁかもしれん」

「俺自身が想定していなかったことも…実際はあると思います。でもそれすらも…俺には必要なんだと、思います…。修行は何も酒造りだけではなくて…俺の人生そのものの修行でもあるんです…」

「そこまで…自分を追い込む必要があんのか?」

だってそれは…
そうしなければ…彼女の…
雪穂の居場所を守ってやれないと思うから…