これくらいの言われようがなんだ。
男たるもの、一歩外へ出れば周りは敵だらけ。
最初から歓迎されるなんて思うな。

俺は気持ちを鎮め、わざと大きな声で迫田を呼んだ。

「迫田さん!戻りました!」

奥の方からガタガタと何かを引きずるような音がする。

俺はまだ奥には入ったことがないから何があるのかよくわからない。

ドアが開き、迫田がひきつった表情で出てきた。

「あ、加賀見…。早いの」

「五分前なんで…そろそろかな、と」

「目一杯休憩してええんだぞ」

「そうなんですか。じゃあ明日からはそうさせてもらいますね」

中での会話がすべて聞こえていたことなど尾首にも出さず、俺はシレッと迫田に言った。

「加賀見、アンタ…」

「なんでしょう?」

「い、いや、なんでもない。午後からは親方が座学する、言うとったが?」

「あ、聞いていらしたんですね。もしかしたらご存知ないかと思って」

「親方から聞いちょるけん。ええよ」

「明日からは休憩のあとそのまま本宅で座学になると思います」

「おう、わかった」

「今日はありがとうございました。明日も宜しくお願いします」

「くたびれただろ?慣れんことしよったけん」

「明日は筋肉痛かもしれませんね」

「まぁそのうち慣れえわな。ほんなら午後からもがっしょでの」