昼食を終えて、少しだけ残った時間で離れに戻り再び専門書を読んだ。

休憩が終わる五分前には蔵に戻った。

午後からは座学と言われていたが、一応迫田にはそのことを伝えておかなければならない。
親方から聞いているかもしれないが、俺の口からも伝えておくべきだろう。

蔵に入るとまだ誰も仕事を始めていない。
皆まだ休憩中か?
そう思って奥へ進むとどこからか人の話し声が聞こえてきた。

「アイツ、東京から来たんですよね?なんでまたこんなド田舎に」

この声…
真瀬か?

「人生を賭けられるような仕事をしたいって言っとったぞ」

この声は迫田さんだ。

「迫田さん、そんな嘘みたいな話信じてんですか?俺は信じられんわ。きっとお嬢さん狙いに決まってますよ」

「お前、滅多なことを言わんがええぞ」

「けど他に考えらんないっしょ」

「どういう理由だらと、やる気があるんはええわの」

「邪な理由ですよ」

「お前はなんでそう、穿った見方しかできんのかのぅ…」

「誰もが思ってますよ。どうせまた前の二の舞になるって。前より酷いんじゃないですか?東京の男なんだから」

アイツ…
言わせておけば言いたい放題言いやがって…

俺は込み上げる怒りを必死に抑えていた。