「…あまり序盤から飛ばされないほうが…。無理はしないでくださいね」

「ありがとうございます…。健康体なんで、大丈夫ですよ」

「それならいいんですけど…」

雪穂はまだどこか不安そうで。
彼女を励ましたい俺はそんな顔を見るのが一番辛い。

「それに雪穂さんの料理が食べられるんで。それも元気の源ですよ」

「そこまで言っていただけるほどのものじゃないですよ…」

「いえいえ!家庭料理なんてほとんど口にしたことないんで。嬉しいです」

そこへ親方が入ってきた。

「何しちょうか。はよせんと休憩終わあぞ」

「あっ、すみません!」

雪穂が作ってくれた昼食はチャーハンと若布スープ。
これもなかなかのもので、やはり彼女は料理が得意なんだと確信した。

「おう、チャーハンか。懐かしいの」

親方も嬉しそうにしている。
雪穂が俺を見て言った。

「うちの母は和食しか作れなかったので…洋食や中華なんかはあたしが作ってたんです」

「なるほど…」

「あれが亡くなってからは雪穂が食事を作っておったんだ」

そうだった。
彼女の母親は若くして他界したと聞いていた。

それにしても…
早くに親と死に別れるのは辛かっただろう。