同じチームの真瀬以外は俺より随分と年上に見える。
真瀬は…俺より年下かもしれない。

「じゃあ、加賀見。早速始めぇか」

「はい!」

迫田に言われ、ついていった。

「ワシら追廻は簡単に言うと雑用係みてぇなもんでの。担当の手がまわらんところを手伝ったりもするけん」

「はい」

「アンタ、これの前は何しちょったの?」

「えっ…と、普通のサラリーマンです」

「ほぉ!そげん人がなんでまた?」

「人生を賭けられるような…何かがしたかったんです」

「今時の若者にしては珍しいの…。誰もが楽して金が欲しいだろうに」

「そう…なんでしょうか…」

「そげだわの!好き好んでエライ仕事するモンはおらん。現にお嬢さんの元ダンナなんて…」

迫田はそこまで言いかけてあからさまにしまったという顔になった。

「いやいや、その話はアレだ…。まぁ聞かんかったことにして…」

「…はい…」

その後は余計なおしゃべりはせず、迫田から掃除のやり方を懇切丁寧に教わる。

徹底的に磨き上げ清潔保持する。
度々自分たちもアルコールで手指消毒をして、余計な菌は絶対に増やしてはいけないと言われた。

自然にある様々な菌は当然蔵の中に存在していて、それがお互いに混ざり合い、その蔵独自の酒を醸している。
だがそれ以外の菌はご法度なのだ。