「ああ。志田(しだ)くん?彼と同期なんですね」

「はい!志田がいっつも加賀見さんがすげーって言うんで、俺もつい憧れちゃって…」

男に憧れられてもなぁ…

「それはそれは…光栄です。そんなにすごくもないですけどね」

「またまたご謙遜を!成績も課内で一番らしいじゃないですか!」

「まぁ…運もありますから」

俺は心にもないセリフを吐いた。本当は努力しているのだから当然だと言いたかったが…
後輩相手に自慢するのは大人げない。
能力は本当に必要なときに使えばいい。
やっと俺もそう思えるようになってきた。

「いいですよね。加賀見さんイケメンだし知識もあるし。鬼に金棒ってヤツですよね」

イケメンだけ余計だ…。
俺はそのせいでこっぴどい目に遭わされたんだから。
今となってはこの容姿に迷惑してるのが本音だ。

「イケメンというのは外見だけでなく内面も充実してこそ、本当の意味でイケメンなのではないですか?」

「だから加賀見さんはイケメンで合ってます!」

なんというか…素朴というか素直というか。
俺にはない純粋さを持ち合わせた折原に、俺は好感を持った。

「折原さんも営業に向いていると思いますよ。そうやって真面目な真摯な様子はお客様に伝わるでしょう?」

「まぁ…真面目かどうかは別として、俺、口八丁ですから」

そう言って笑った折原の顔はとても爽やかだった。