玄関を開け、台所と風呂場に買ってきた荷物をそれぞれに収める。

二部屋のうち、朝日が差し込む東側を寝室にしようと襖を開けた。

そこには…
真新しい布団が畳んで置かれていた。

触ってみるとふんわり温かい。
敷き布団と掛け布団と枕と毛布。
それぞれに糊の効いた包布もかけられている。

俺のためにこれを?
そうしたのは彼女の父親以外にはない。
俺達が出掛けている間に用意してくれたのか…。

ヤバい…。
涙腺が脆くなってやがる…。

父親の思い。
彼女への尊いほどの愛情ゆえに…
俺にもその愛情を分けてくれたのか?

いやまさか…
俺という人間がどんなヤツかわからないのにまだそこまでは。
驕っちゃいけない。
今はまだ。
気持ちを研ぎ澄ませていなければならない。
父親の思いやりには素直に感謝して。
それ以上は…
望むまい。

「加賀見さん…いいですか?」

雪穂が再びやってきた。
その手には掃除機がある。

俺は咄嗟に彼女に駆け寄った。

「こんな重いものを!言ってくれれば俺が運びます!」

「フフ…加賀見さん、過保護過ぎます…。これくらい、東京でも持ってました」

それは…そうだろうが…

「でもこれは俺のためですよね?あなたが俺のことで労力を使う必要はないんです」

雪穂は嬉しそうに笑う。