「加賀見さん…」

「明日から早速修行開始なんですよ!今日はしっかり食べて休みます。だからあなたも…ゆっくり休んでください…」

雪穂は頷いて言った。

「おじさんに…連絡しました。近日中にあたし達の荷物を送ってくれるそうです」

「何か言ってましたか?」

「ええ…。すぐに修行ができると聞いて驚いてました」

「でしょうね。俺も驚いてるんだから」

「あたしも、です…。まさか父が…許してくれるなんて…」

「あなたがここに戻るのは…当然です。反対される理由はない。俺が修行するってのが、お父さんにとっては意外だったでしょうが…」

「何か…考えがあるんだと、思います…。それを誰にも話さない人ですけど…」

「だろうとは思います。俺も…覚悟はしてます」

「加賀見さん…。蔵の仕事は本当に厳しいんです。今まで何人も…辞めて行った人を見てきました。だから…」

「わかっています。けど…そんなに簡単に諦められるような気持ちじゃないんで…」

あなたのことも…
と言おうとして、やめた。
これ以上彼女の心を乱したくはないから。

中上酒蔵に到着し、買い物した荷物を持って離れに戻る。
雪穂が手伝うと言ってくれたが、彼女も相当疲れているだろうと思い、やんわりと断った。