到着した駅は綺麗ではあるがものすごく小さい。
無人の改札を出ると土産物屋があった。

「ここからは足がないのでタクシーを呼んでもらいます」

雪穂はそう言って駅員に声を掛けた。

しばらく待っていると一台のタクシーがやってきた。

二人で乗り込むと雪穂が運転手に行き先を告げる。

「Y町の…中上酒蔵までお願いします」

「はい」

タクシーに揺られながら車窓を眺める。周りは民家があるものの山に囲まれている。
所々残雪もある。

「雪が残っていますね」

俺がそう言うと運転手は言った。

「今年はほんによう降りましたわ。一番多いとこは百センチ越えよったですけん」

百センチ!
そんな雪は見たことがない。

「そんなに降るんですか?」

「お客さん、よそから来らいたかね?」

「はい。東京から」

「はぁ!ほらまたえらい都会から来らいたね!そりゃおべらいわ」

おべらい?
俺が意味不明な顔をしていると雪穂が教えてくれる。

「驚くという意味です」

「驚く?」

「そう…。おべるというのが驚く、です。驚かれるというのをこちらの方言でそう言います」

「へぇ…」

「多分、加賀見さんは言葉でも苦労されると思います」

「はぁ…」

なんとなく、そんな気はしてる。