なんと…
連絡してないのか…。

「…いきなり行くほうがまずくないですか…」

ボソリと口から出た。

「悩みました…。実は実家を逃げるように出てから今日まで…一度も父とは連絡をとっていないんです…」

怖かった、のかもしれない。
お父さんの反応が。
彼女だけでなく、きっとお父さんも傷ついたはずだ。
また過去の傷を抉られる可能性がなきにしもあらずで…
言えなかったのかもしれない…。
一番傷ついたのは雪穂なのに。
父親の心配をして。
そんな雪穂だから俺は…

「行きましょう。それで誠意をもって話してみましょう」

「話すら…できないかもしれません…」

「それでも…ずっと音信不通だった娘が戻って来た事実は…お父さんの心に揺さぶりをかけるはずだ…」

「…ありがとう、ございます…」

俺は雪穂に優しく微笑みかける。
ぎこちないながらも雪穂は笑顔を返してくれた。

乗り継ぎをした列車の中。
車内は閑散としている。
時間的にもまだまだ乗客がいそうなのに。

「あの…随分と空いてますね?」

俺が疑問を口にすると彼女は言った。

「この辺りの人は皆自家用車で移動するんです。列車を使うのは学生くらいかな…」

そうなのか。
そういうところも都会では考えられない。