「雪穂さん…。付き合ってもらえなくてもいいです。でも…あなたのご実家で…修行だけはさせてもらえませんか?」

彼女は漸く顔を上げて俺を見てくれた。

「付き合うかどうかわからないのに…修行するんですか…?」

「はい」

「どうして…?どうしてそこまで?」

「あなたが好きだから…じゃ理由になりませんか?」

「でも…あたしはあなたを好きになるかどうか、わからないんですよ?それなのに…」

彼女の言うとおりだ。
もし、会社を辞め彼女の実家で修行しても彼女の気持ちが俺に向かなかったら。
そのとき俺は。

違う。
今、そんなことを考えなくてもいい。

ただ今は。
俺の真心を、彼女への愛を証明したいんだ。
そこに見返りを求めてはいけないんだ。

「たとえ、そうでも。俺はやりたいんです。自分を試したいんです。もちろんあなたへの想いははっきりしています。それとは別に。今までやったことがない厳しい職人の修行が俺に務まるのか。努力すれば為せないことはないというのが俺の信条なんで。それも証明したい。俺が努力して自分のものにできるか、やってみたい。そして必ずものにしたい。そうでなければ俺は…自分を信じられない…」

「加賀見さん…」

そうだ。
俺は己を試したいんだ。