君はまるで雪のように

見渡す限り真っ白で無機質な部屋。
窓ひとつない。
牢獄でさえ、鉄格子が嵌まった窓があるというのに。

そしてその部屋で俺は一体何をしているのか…

閉ざされた意識の彼方に見える…色。
赤? 朱?
それは白一色の中で異様なほど目立っている。

うっすらと開いた瞼。
靄のかかったような開き切っていない視界を無理やりこじ開けるように目を凝らす。
そして何気なく落とした視線の先。
だらりと垂れ下がった両の掌。

う…うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!
指の間から滴る赤い粘度のある液体。
これは…まさか…
血?

ゆっくりと足元へ頭を傾ける。
言いようのない恐怖に支配されながらもどこかで見たいという真逆の欲望があった。
そして。
そこには…

グリップにべっとりと血が付いた拳銃が一丁。
そして…
決して鮮やかとはいえない赤い色の上に横たわる…
細身の色白の女。

誰だ?
け、啓子(けいこ)…?

心臓がドキリと跳ねたその瞬間。
俺の瞼はくっきりと開かれた。

視界に広がるのは見慣れた天井…
夢…だったの、か…?
首に若干の違和感を覚える。

あぁ…そっか…またやっちまった…。
夢の中で見た血のような赤…
ソイツの正体はこれだったんだ。

部屋着のスウェットのズボンに染みている赤も。
斑にラグを染めている赤も。
そして両の掌にまとわりついている赤も。

全部コイツだ。