ミケ太が行方をくらませてから三日が経った。さすがの作太郎にも焦りの色が見え始めたそんな当日。
「サクさん、昨日もミケ太、帰って来なかったん?」
「うん。ちょっと、心配かな……」
 ナカさんは作太郎の珈琲を飲みながら聞く。作太郎はまだミケ太が帰っていない旨を報告した。
「おかしいですわ! こんなにもミケ太が帰って来ないなんて、やっぱり何かの事件に巻き込まれたのかしら?」
 おユキちゃんの事件と言う言葉にナカさんがピクリと反応する。
「それやったら、ホンマに大事《おおごと》やで! あー……、手がかりがあればなぁ……」
 八方塞がりと言った様子のナカさんとおユキちゃんを尻目に、クリスティーンがあっ! と声を上げた。
「どうしたの? クリスティーン」
「手がかり、アリマス」
「?」
 一同がクリスティーンに視線を向ける。クリスティーンはぽんっ! と手を打つと、
「昨日の聞き込みで、ミケ太か分からないデスケド、日本猫の家を知りマシタ」
「どこっ?」
 ナカさんとおユキちゃんが一斉にクリスティーンに詰め寄る。クリスティーンはん~、としばらく考えた後、
「確か、ワタシの家の隣デス!」
 笑顔で言うクリスティーンの言葉にナカさんはうさんくさそうな目を向ける。
「それ、ホンマかぁ……?」
「嘘じゃナイデスヨ!」
「ここで手をこまねいていても仕方ないですわ。行ってみましょう!」
 おユキちゃんの言葉にナカさんも、それもそうやな、と言って賛同する。
「でも、行くにしても外国人居住区だよ? 異人さんがたくさんいる場所だよ? 二人とも大丈夫なの?」
 作太郎の言葉に一瞬だけビクリと身体を震わせた二人だったが、
「だ、大丈夫ですわ……」
「異人さんが怖くて、ミケ太が救えるか!」
 そう自分たちを鼓舞すると、
「サクさん、はよ行くで!」
 作太郎の店じまいを手伝って、クリスティーンの家の近所へと向かうのだった。
 クリスティーンの住んでいる町は、見事な町並みだった。西洋の建物が、整備された区画に綺麗に並んでいる。背の高いそれらの建物は物珍しく、またその町を歩いているドレス姿の貴婦人たちもみな、優雅で美しかった。
 そんな光景に飲まれそうになっているナカさんとおユキちゃんに、
「こちらデス」
 クリスティーンは家までの道のりを案内する。そうして歩いているとクリスティーンの家が見えてきた。
「クリスティーン……、やっぱりお金持ちやったんやな……」
 その家の造りに、ナカさんがポカンと口を開けてしまう。おユキちゃんはもう言葉も出ない様子だ。そんな二人を、作太郎は微苦笑しながら見ている。