「なんのこと、か……」

 思い当たることが、ひとつだけあった。ミャオちゃんが一心さんを遠ざけたのも、それなら納得できる。

「はい……。わかります。ふたりには、バレていたんですね……」

 泣きそうな気持ちで、そう告げる。一転、心配するような表情に変わったふたりに「大丈夫」と微笑みかけて、話を続ける。

「私――一心さんが好きです」

 そう言ってから、好きだと口に出したのは初めてだと気づいた。ただ、声に出しただけなのに、〝好き〟という気持ちが存在を主張するように、熱を持って私の体中を駆け巡り始める。

「もう、ずっと前から好きでした。今までは、響さんが一心さんを好きだったから言えなくて。でも、そうじゃなくなって打ち明けようと思っても、なかなか相談できなくて……」

 熱い息を吐きながら、つっかえながら、ふたりに気持ちを打ち明ける。
 重い鎖から解放されたみたいに、自由になった恋心で胸の中がいっぱいになる。

 熱くて、苦しい。なぜだか泣きたくなる。心の中に隠していた間に、私の一心さんへの恋心は、ここまで大きくなっていたみたいだ。

「バカね。悩んでないで、早く言ってくれればよかったのに」

 立ち上がった響さんが、スツールに座った私を後ろから抱きしめる。後頭部が響さんにすっぽり埋まって、こらえていた涙があふれてきた。

「私も響も、ずっと待ってた。おむすびが自分から話してくれること」

 隣に座っているミャオちゃんも、私の手をぎゅっと握ってくれる。

「ごめんなさい……。最初はだれにも言わないつもりだったので、どうしていいかわからなくなっちゃって」

 涙をぬぐいながら、嗚咽がもれるのをこらえる。

「だれにもって、一心ちゃんにも言わないつもりだったの?」
「はい、そのときは……。でも、今は……」

 黙りこんだ私の背中を、響さんがばしんと叩いた。