「……わかった。今から食堂に移動するか?」
「ううん、ここで待ってる」
「じゃあ、店の厨房で作ってくる。どうせだし、おむすびと響も食べるか?」
一心さんは、スツールの背にかけてあったジャケットを持って立ち上がった。
「そうね。時間も経って小腹がすいてきたし……。少しだけいただこうかしら」
「ありがとうございます。私も、控えめサイズだったら食べられそうです」
「わかった。行ってくる」
ジャケットに袖を通しながら扉に向かう一心さんの後ろ姿を見送る。
ぱたん……という、扉が閉まる音。その余韻が消えたころ、響さんが叱るような口調でミャオちゃんをたしなめた。
「……ミャオ。一心ちゃんのこと、わざと行かせたでしょう」
え、わざと? と混乱するけれど、ミャオちゃんはまったく悪びれずにうなずいた。
「そう。おむすびと話すのに、邪魔だったから」
「じゃ、邪魔ってミャオちゃん、どうして? 一心さんに聞かれたくない話なの?」
男性には聞かせたくない類の話なのだろうか。響さんはおそらく、ミャオちゃんの中で女友達カテゴリーに入ってるだろうし。
ミャオちゃんは、真剣な表情で私の目をじっと見る。なにかを探るような、そんな視線に居心地の悪さを感じる。
「一心がいたらおむすびが、話してくれないから」
「私が……?」
なんのことだろう。ミャオちゃんはゆっくり、私に言い聞かせるようにして言葉をつなげた。
「おむすび。私と響に、言いたいのに話してないこと、あるよね」
「えっ……」
思わず響さんを見たのだが、こちらもミャオちゃんと同じような表情をしている。
「言っておくけれど、ごまかしても無駄よ。あたしもミャオも、前から気づいているんだから。なんのことか、わかるでしょう?」
響さんの口調は、優しかった。そこに姉のような慈愛の気持ちが込められているのを感じて、ドキリとする。
「ううん、ここで待ってる」
「じゃあ、店の厨房で作ってくる。どうせだし、おむすびと響も食べるか?」
一心さんは、スツールの背にかけてあったジャケットを持って立ち上がった。
「そうね。時間も経って小腹がすいてきたし……。少しだけいただこうかしら」
「ありがとうございます。私も、控えめサイズだったら食べられそうです」
「わかった。行ってくる」
ジャケットに袖を通しながら扉に向かう一心さんの後ろ姿を見送る。
ぱたん……という、扉が閉まる音。その余韻が消えたころ、響さんが叱るような口調でミャオちゃんをたしなめた。
「……ミャオ。一心ちゃんのこと、わざと行かせたでしょう」
え、わざと? と混乱するけれど、ミャオちゃんはまったく悪びれずにうなずいた。
「そう。おむすびと話すのに、邪魔だったから」
「じゃ、邪魔ってミャオちゃん、どうして? 一心さんに聞かれたくない話なの?」
男性には聞かせたくない類の話なのだろうか。響さんはおそらく、ミャオちゃんの中で女友達カテゴリーに入ってるだろうし。
ミャオちゃんは、真剣な表情で私の目をじっと見る。なにかを探るような、そんな視線に居心地の悪さを感じる。
「一心がいたらおむすびが、話してくれないから」
「私が……?」
なんのことだろう。ミャオちゃんはゆっくり、私に言い聞かせるようにして言葉をつなげた。
「おむすび。私と響に、言いたいのに話してないこと、あるよね」
「えっ……」
思わず響さんを見たのだが、こちらもミャオちゃんと同じような表情をしている。
「言っておくけれど、ごまかしても無駄よ。あたしもミャオも、前から気づいているんだから。なんのことか、わかるでしょう?」
響さんの口調は、優しかった。そこに姉のような慈愛の気持ちが込められているのを感じて、ドキリとする。