「私からしたら今もおてんばな孫なんだけど、そんなふうに言ってもらえるなんてうれしいね。婆冥利につきるよ」
「性格は、藤子さんに似たんですね」
「ええ? 私と、あの子がかい?」
「はい。さっぱりしていてかっこいいところがそっくりです」

 今まで笑顔だった藤子さんの顔が、くしゃりとゆがむ。

「店員さん。あんた、こんなところで婆を泣かせる気かい。せっかくここまで我慢してきたのに」
「ええ? そ、そんなつもりじゃ」

あわあわしているところに、タイミング悪く四葉さんが戻ってくる。

「お待たせ~! ん、どうしたの? おばあちゃん」
「なんでもないよ。ちょっとゴミが目に入って」

 藤子さんは、指で目元をぬぐっている。本当に泣かせてしまったのだろうか。でも、かわいい孫の結婚式なんだから、泣くのを我慢しなくたっていいのに。さびしいのも、うれしいのも、感極まるのも、当たり前の感情なんだから。

 サバサバしている藤子さんは、家族に泣き顔を見せたくないのかもしれない。
 疑うことを知らない四葉さんは「そっか、大丈夫?」とそのまま信じている。

「あ、そうそう。おばあちゃんに料理取ってきたよ」

 はいどうぞ、と言い添えながら四葉さんが藤子さんに渡したお皿。そこに盛られた料理たちを見て、私と一心さん、藤子さんは息をのんだ。

「四葉さん、これってもしかして……」
「お子様ランチ、かい……?」

 ケーキがのっていると思っていたお皿の上には、エビフライ、ミニハンバーグ、トマトソースのパスタとパエリアがバランスよく盛り付けられていた。パエリアはわざわざ、型を使って抜いている。

「うん、そう。チキンライスはなかったんだけどね。色が似てるからパエリアでもまあいいかって。ちょうど近くにコップがあったから、それを使って形も作ってみたんだ。気づいてもらえたってことは、ちょっとはそれらしくなったのかな」
「……どうして、これを私に?」

 お皿を受け取った体勢のまま、目を丸くしていた藤子さんがやっと口を開いた。