「四葉さん。あらためて、ご結婚おめでとうございます」

 柔らかくて自然な、レアな笑顔を浮かべる一心さん。

「おめでとうございます」

 私も、その笑顔に見とれる前にお祝いを述べた。

「ありがとう。一心さん、おむすびちゃん」

 はにかんだように微笑む四葉さんは、やっぱりキレイだった。

「ほんと、今日は来てくれてありがとうね。ケーキたくさん食べてって」
「はい。今たくさん取ってきたところです」

 お皿を見せると、四葉さんは喜んでくれた。これはこういうケーキで、これがオススメで……と軽く説明をしてくれる。そして、お皿を持っていない藤子さんに気づく。

「おばあちゃんは? まだお皿も取ってきてないの? しょうがないなあ、ちょっと待ってて」
「あっ、四葉。自分でやるから、待ちなさい」

 藤子さんが制止する前に、すたすたとお皿の場所まで歩いていってしまう。ふわふわした羽のようなドレスは、四葉さんの足かせにはならないみたいだ。

「花嫁がビュッフェを取っていたら、変に思われるだろうに」
「大丈夫ですよ。ここにいる人たちはみんな、四葉さんの性格を知っているから」
「……それもそうだね。あの子は友人に恵まれたみたいだ」

 軽食やケーキをお皿に盛っている四葉さんの周りに、「どうしたの?」という様子でたくさんの人が集まっている。声は聞こえないけれど、四葉さんが笑顔で説明しているのがわかった。そして、周りにも笑顔が伝染する。

「私、四葉さんの飾らない性格も、かわいくて優しいところも、大好きです。あと、時々イケメンなところも。あんな女性になりたいなっていう理想の完成形が四葉さんかも」

 そう伝えると、藤子さんは「褒めすぎじゃないかい」とからからと笑う。その表情が少しさびしそうに見えるのは、さっき聞いた話のせいだろうか。