新郎新婦によるケーキ入刀ならぬクロカンブッシュ入刀、お互いにクロカンブッシュを食べさせられるファーストバイトが続けて行われ、ゲストにシャンパングラスが配られて乾杯の音頭となる。そして、待ちに待った歓談の時間がやってきた。

 ずらりと配置された食べ物たちには目もくれず、四葉さんの友人たちが新郎新婦を囲い込む。私たちもまず挨拶してから……と思っていたけれど、写真撮影もしているし、先にビュッフェを取りに行こうかと一心さんたちと相談する。

「ミャオちゃん、最初にどれを食べる?」

 白いお皿を持ってビュッフェコーナーをうろうろする。小さめに作られた、季節のフルーツを使ったケーキやタルト、苺味や抹茶味、チョコレート味のムースに目を奪われる。私が好きだと言ったメロンショートも、四角くカットされて置いてあった。四葉さんの手作りではなく会場が用意したものだが、ミニハンバーグやパスタもあっておいしそうだ。

 お皿がほとんど埋まったころ、四葉さんたちの親族のグループの近くを通った。年齢層がバラバラで、男女混合だから身内なんだなとすぐわかった。

 驚いたのは、その中で見たことのある顔を見つけたからだ。藤色の着物を着て、パーマのかかった短い白髪をきちっとセットした、かくしゃくとした老婦人――。

「あっ、昨日の……!」

 その人は、昨日こころ食堂でお子様ランチを注文した、あのお客さまだったのだ。
 近くにいた一心さんも私の声でおばあさんに気づき、驚いた顔をしている。

「ど、どうして昨日のお客さまがここに?」

 あわてた私の問いに、一心さんは当たり前の答えを返す。

「四葉さんか柚人さんの親族なんだろう。祖母か、もしくは大叔母か……」

 あのおばあさんがどちらかの祖母だとしたら、昨日聞いた孫との思い出は――。