「そうだねえ。そんなに今風のものじゃなくて、昔ながらの……。デパートのレストランにあったようなものさ。今の若い人は、デパートなんて行かないのかね」
「いえ、私も小さいころによく母に連れていってもらっていました。屋上に遊具があったりして……。そこで遊んで、最上階のレストランでお子様ランチを食べるのが楽しみでした。今はもう、そのデパートはなくなってしまいましたが」
今ではお買い物といったらショッピングセンターが主流で、デパートと呼べるような商業施設も減ってしまったけれど……。日常の隣にあるテーマパークのようなあの感覚は、今でもはっきり覚えている。
「私はね、孫を連れてよくデパートに行っていたんだよ。休みの日になると、せがまれてね。店員のお姉ちゃんの言うように、屋上施設とレストランが目当てさ」
子どものころって、何回同じ場所で遊んでも飽きなかった。コインを入れて動くパンダの乗り物だって、何度乗ったかわからない。毎週デパートで遊べたらいいのになあと思っていたし、お孫さんも同じだったのだろう。
「私の子どものころは、デパートもお子様ランチなんてものもなくてねえ。ミートソーススパゲッテイやナポリタンなんかの洋食が出てきたのも、子どもを産んだころだったかね。だから、レストランにあるお子様ランチを食べてみたくて、でも自分では頼む度胸もなくてね」
そこでひと息ついて、ゆっくりとお茶を飲む。
そんなに食べたいなら頼めばいいじゃない、と言うのは簡単だけど、常識的に生きてきた老婦人にとって『お子様ランチふたつ』と注文するのは、逆立ちするより難しいのだろう。
「わかります。俺は自分が子どものときも、〝自分はお子様じゃない〟と変な意地を張って頼みませんでしたから」
うんうん、と思って聞いていたのに、一心さんが笑っていいのか迷うような発言を投げ込んできた。一心さんにも大人ぶりたい子ども時代があったんだな、とほほえましい。寿司職人を目指したのも早かったらしいし、早熟なお子さまだったんだろうな。
おばあさんは「ふふふ」と遠慮なく笑っている。
「いえ、私も小さいころによく母に連れていってもらっていました。屋上に遊具があったりして……。そこで遊んで、最上階のレストランでお子様ランチを食べるのが楽しみでした。今はもう、そのデパートはなくなってしまいましたが」
今ではお買い物といったらショッピングセンターが主流で、デパートと呼べるような商業施設も減ってしまったけれど……。日常の隣にあるテーマパークのようなあの感覚は、今でもはっきり覚えている。
「私はね、孫を連れてよくデパートに行っていたんだよ。休みの日になると、せがまれてね。店員のお姉ちゃんの言うように、屋上施設とレストランが目当てさ」
子どものころって、何回同じ場所で遊んでも飽きなかった。コインを入れて動くパンダの乗り物だって、何度乗ったかわからない。毎週デパートで遊べたらいいのになあと思っていたし、お孫さんも同じだったのだろう。
「私の子どものころは、デパートもお子様ランチなんてものもなくてねえ。ミートソーススパゲッテイやナポリタンなんかの洋食が出てきたのも、子どもを産んだころだったかね。だから、レストランにあるお子様ランチを食べてみたくて、でも自分では頼む度胸もなくてね」
そこでひと息ついて、ゆっくりとお茶を飲む。
そんなに食べたいなら頼めばいいじゃない、と言うのは簡単だけど、常識的に生きてきた老婦人にとって『お子様ランチふたつ』と注文するのは、逆立ちするより難しいのだろう。
「わかります。俺は自分が子どものときも、〝自分はお子様じゃない〟と変な意地を張って頼みませんでしたから」
うんうん、と思って聞いていたのに、一心さんが笑っていいのか迷うような発言を投げ込んできた。一心さんにも大人ぶりたい子ども時代があったんだな、とほほえましい。寿司職人を目指したのも早かったらしいし、早熟なお子さまだったんだろうな。
おばあさんは「ふふふ」と遠慮なく笑っている。