「おむすび、チョコ」

 雑談にかまけていたら、ミャオちゃんがコンビニの袋を差し出してきた。

「あ、そうでした。柚人さんのチョコ菓子を渡さないと」

袋からチョコを取り出していると、急に四葉さんの眉がへにょっと下がった。

「ど、どうだった? ちゃんと並んでた?」

 不安そうな表情で、手を胸の前で組んでいる。

「はい。みんなのぶんもまとめて買ったんですけど、まだ棚に残ってるくらいたくさん置いてありましたよ」
「ああ……、よかったあ……」

 四葉さんは大きく息を吐いて、ホッとした表情でチョコ菓子を受け取る。そして、愛しそうにそのパッケージを眺めている。柚人さんがデザインを提案した四葉のクローバーのパッケージは、もちろん恋人である四葉さんの名前にちなんだものだ。

「売り場にあっても、パッケージが大人かわいくて目立ってましたし、すごく売れそうな気がします! なにより、味はパティシエ四葉さんのお墨付きですし」
「うん。それは試作のときに味見させてもらったから保証できるよ」
「味が四種類あって、カカオ濃度がそれぞれ違うのも魅力的ですよね。家で食べるのが楽しみです」

 カカオ濃度が高いチョコレートはコンビニにも売っているけれど、ずっと食べているとだんだん甘いチョコも欲しくなってくるのだ。なので、四種類入っていて気分で選べるのはありがたい。

「結婚式では、このチョコレートを使ったスイーツも並ぶんですよね?」
「うん。今いろいろ試作しているから、楽しみにしてて」
「はい。入籍は、結婚式の前にするんでしたっけ」

 両家のご両親がそろうタイミングで、一緒に役場に届けに行くと聞いている。

「一応、式の前日には出しに行く予定」
「わあ。じゃあ、式でお会いするときにはもう、佐藤四葉さんじゃなくなってるんですね」
「そ、そうだね。なんだか照れるな」

 四葉さんが、頬を染めて微笑む。