「――それにしても」

 私が食後のお茶をふたりに運んでいると、一心さんがいきなり本題を切り出した。

「白州さんは、恋愛には年齢や性別は関係ないと考える方なんですね」

 びっくりして、湯飲みの中のお茶が揺れる。一心さんはまっすぐで、遠回しな言い方はしない人だけど、ここまでダイレクトな聞き方をするとは予想してなかった。

「え? ああ、まあ、そうですね。と言っても恋愛を語れるほど経験が多いわけではないですが……」
「ちょ、ちょっと、一心くん」

 不思議そうな顔をしながらも律儀に答える白州さんの横で、響さんがあわてたように一心さんをにらみつける。

「響」

 一心さんが、響さんをまっっすぐに見つめ返す。『白州さんの人柄はわかっただろ。お前はどうするんだ』と、一心さんの真剣な瞳が訴えている気がした。

「酒井さん、店長さん? どうかなさったんですか?」

 白州さんも、ふたりの様子がおかしいことに気づいたみたいだ。
 沈黙の時間が続いたのち、にらめっこに負けた響さんが大きく息を吐き出した。

「ここまで来たら、腹をくくるしかないか……」

 そのつぶやきは、隣にいる白州さんにも聞こえていたと思う。

「白州さん。あの、聞いてほしいことがあるんです。あの、もしかしたらびっくりするかもしれないんですけど」
「びっくり?」
「はい。あの、ちょっと待って。心の準備が」

 すー、はー、と深呼吸をする響さんに『がんばれ!』と念を送る。一心さんも、微動だにせずふたりを見守っていた。