「恋愛に年齢や性別なんて関係ないのだから、賛成してあげればよかった。父は今でも、母との歳の差を気にして保険や貯蓄に気を遣っているんです」

 心の内を吐露するような白州さんの言葉は、母子家庭の私にもささるものだった。

 子どものころ、何気なく親に吐いてしまった暴言って、大人になっても覚えていたりする。もしかしたら親は覚えていないかもしれないけれど、自分の中では澱になって心の奥底にたまっているのだ。そしてそれは、親と離れているときほど思い出す。ちりちりとした、罪悪感を伴って。

「それはたぶん、白州さんとお母さまを愛しているからだと思いますよ。年齢差がなくても、白州さんのお父さまはそうしていたと思います」
「そうなんですかね……」

 家族だからこそ、距離が近すぎるからこそわからないこともあるのだ。

「それに、今からでも遅くないんじゃないですか? 本気で反対していたわけじゃないって伝えるのは」

 一心さんが前向きなアドバイスをすると、やっと白州さんの表情が晴れた。

「そうですよね。今度実家に帰ったときは、父とゆっくり晩酌しながら話をしたいと思います。焼きそばの話を肴にして」

 カウンターはすっかり和やかな空気になって、白州さんと響さんは残りの焼きそばを完食した。