「焼きそば、いいですね。私も大好きです。どんな思い出があるんですか?」
「高校生のころの、話なんですけど――」
そう前置きして、白州さんが話し始める。
白州さんが高校生のとき、お母さんが再婚をしたそうだ。新しいお父さんはお母さんよりもだいぶ年上で、歳が離れていることで白州さんは再婚に反対していた。
「今思えば、単に再婚が嫌だったのかもしれません。歳が離れていなくても、なにかしら粗を探して反対していたような気がします」
多感な時期だし、急に知らない人と家族になると言っても戸惑うだろう。同性同士だとより複雑なのかもしれない。
「父は、高校教師なんですよ。教師は厳しそう、口うるさそう、という先入観もあったんですよね。自分は優等生ではなかったし、そのころからフリーダムに生きていたので、教師に苦手意識があって」
生活態度にも細かく口を出してくる義父に反発して、一緒に暮らし始めてからもよそよそしい態度を取ってしまっていたそうだ。
そんなある日、休日にお母さんが外出をして、初めて義父とふたりきりになった白州さん。お昼はファストフードでも食べようと出かける用意をしていたら、義父がホットプレートを引っ張り出して、焼きそばを作ってくれたそうだ。
幼いころに両親が離婚した白洲さんにとっては、それが初めての〝父の料理〟だった。
「具がキャベツと豚肉だけのシンプルな焼きそばだったんですけど、母の作る焼きそばよりも味が濃くて、具の切り方も不格好で大きくて……。ああこれが父親の料理なんだなって思って、初めてちゃんと父と向き合えたんです」
「素敵なエピソードですね……」
白州さんの瞳に、年齢を感じさせる深い光が宿る。響さんも、しみじみと相づちを打っていた。
「高校生のころの、話なんですけど――」
そう前置きして、白州さんが話し始める。
白州さんが高校生のとき、お母さんが再婚をしたそうだ。新しいお父さんはお母さんよりもだいぶ年上で、歳が離れていることで白州さんは再婚に反対していた。
「今思えば、単に再婚が嫌だったのかもしれません。歳が離れていなくても、なにかしら粗を探して反対していたような気がします」
多感な時期だし、急に知らない人と家族になると言っても戸惑うだろう。同性同士だとより複雑なのかもしれない。
「父は、高校教師なんですよ。教師は厳しそう、口うるさそう、という先入観もあったんですよね。自分は優等生ではなかったし、そのころからフリーダムに生きていたので、教師に苦手意識があって」
生活態度にも細かく口を出してくる義父に反発して、一緒に暮らし始めてからもよそよそしい態度を取ってしまっていたそうだ。
そんなある日、休日にお母さんが外出をして、初めて義父とふたりきりになった白州さん。お昼はファストフードでも食べようと出かける用意をしていたら、義父がホットプレートを引っ張り出して、焼きそばを作ってくれたそうだ。
幼いころに両親が離婚した白洲さんにとっては、それが初めての〝父の料理〟だった。
「具がキャベツと豚肉だけのシンプルな焼きそばだったんですけど、母の作る焼きそばよりも味が濃くて、具の切り方も不格好で大きくて……。ああこれが父親の料理なんだなって思って、初めてちゃんと父と向き合えたんです」
「素敵なエピソードですね……」
白州さんの瞳に、年齢を感じさせる深い光が宿る。響さんも、しみじみと相づちを打っていた。