「再会したら、ああやっぱり好きだなって確信しちゃって。雰囲気とか男っぽい見た目は一心ちゃんに似てるんだけど、大人の男の余裕というか、色気があるのよ。歳は私の少し上だと思うんだけど」

「それは、俺には大人の貫禄がないと言っているのか……?」と一心さんがつぶやいたけれど、響さんは華麗にスルーした。

 私から見れば、一心さんには大人の余裕も色気もある。ただ、響さんからしたら五歳も年下だから、また感じ方が違うのだろう。

 白州さんの人間性は、作った器を見ただけでもわかるような気がする。こだわりを感じつつも使う人を拒絶しない、おおらかな器だった。きっと本人も、包容力のある人なのだろう。

「相手が異性愛者だったら、本気にならないようにしてたのに、思うようにいかないものなのね」

 響さんが傾けているのはお茶の入った湯飲みなのに、一瞬マティーニに見えてしまった。昼下がりの食堂ですらアンニュイな空気に変えてしまうなんて、恋するオネエは恐ろしい。

「人が本気で人を好きになるときって、心が思い通りにならなくなるものなんだと思います。恋に落ちる、とか、心を奪われる、とか言うじゃないですか」
「いいこと言うじゃない。でも、なんだか実感のこもった言い方ね。おむすびにもそういう相手がいるの?」

 ニヤリと笑って頬杖をつく響さん。

「あっ、いえ、一般的にはってことで、私のことじゃ……」

 一心さんの前で、こんなこと言わなければよかった。熱くなる頬をごまかしながら、あわてて両手を振る。

「そ、それより、白州さんとはその後、連絡を取ったりはしていないんですか?」