「この中華おこわ、米に味がしみてておいしいわ~。しかも、もっちもち!」

 お米が硬すぎず柔らかすぎず、むっちりとした食感なのは、もち米とうるち米をブレンドして使っているからだそうだ。

「鶏肉としいたけも、噛むとじゅわっとうまみが出てきますね」
「筍とニンジン、銀杏も入っていて、具だくさんなのがいいわね。外食で品目が摂れるのって助かるのよ」
「そのあたりは、おむすびの意見を反映したな。最初は具が少なめのおこわにしようと考えていたんだが、五目おこわのほうが女性にはウケるだろうと」
「ふうん。おむすびも、いい働きしてるじゃない」

 若竹煮とお吸い物も上品な味で、柏餅はあんこが甘さ控えめであっさりしているから、食後でもぱくぱくと食べられてしまう。

 定食を食べ終え、「は~、おいしかったわ」と食後のお茶を飲んでいる響さんに、私と一心さんの視線が集まる。

 いつ、話し出すのだろう。そう思っているのが、一心さんと交わった視線からも感じる。
 すると、響さんが湯飲みを静かに置いてため息をついた。

「あんたたち、逃げた猫をつかまえるときの目つきになってるわよ。かまえすぎ」

 思わず、一心さんと顔を見合わせる。言われてみれば、響さんの一挙一動を見逃すものか、みたいな気持ちになっていたかも。

「す、すいません。話しづらいですよね……」
「別に、あやまってほしいわけじゃないわよ。深刻な話じゃないんだから、いつもの雑談だと思って気楽に聞いてほしいだけ」
「わかった。響がそうしてほしいなら、善処しよう」

 眉根を寄せて腕を組む一心さんを見て、響さんがぷっと吹き出した。

「一心ちゃんはそこからして硬いんだけど、まあいいわ」

気楽に、というのは生真面目な一心さんには無理な話なのだろう。ただ、響さんが話しやすいように気を遣っているのはわかる。