「終わりよければなんとやら、ってやつね。途中かなり焦ったけど、いい桜まつりだったんじゃない?」

 屋台を片付けながら、しみじみとした様子で響さんがつぶやいた。

「はい。素敵な出会いもありましたし、ミャオちゃんのすごいところも、またひとつ発見できたし」

 ね、というふうにミャオちゃんと目を合わせたのだが、ミャオちゃんは不満そうにむすっとしている。

「すごいのは、わたしじゃない。おむすびは自分のことを、なにもわかってない」
「……ミャオちゃん?」

 なんで私の話になるのだろう。私にはミャオちゃんのような特殊能力はなにもないのに。

「ミャオは、人をよく見ているからな」
「それは、そうですけど……」

 一心さんまでミャオちゃんに同意するから、ますますわからなくなる。しかしミャオちゃんは、そんな一心さんを見て眉をしかめた。

「おむすびだけじゃない。一心もかなり、めんどくさい」
「なんだと?」

 年下の少女に『めんどくさい』と言い放たれた一心さんは、明らかにうろたえていた。

「あたしもそれには同意するわ。だからあたしとミャオが苦労するのよね~?」
「響は、ちゃんとわかってる」

 ミャオちゃんは満足そうにうなずくと、響さんとハイタッチをした。

「なんなんだ、あのふたりは」
「なんか、通じ合ってる感じでしたね……」

この展開についていけず、置いてけぼりをくらった私と一心さん。仲間はずれなのはさびしいけれど、ミャオちゃんが楽しそうだからまあいいか。

 こうして初めての桜まつりは、私の胸に温かさを残して幕を閉じた。