訪れる季節が全部新鮮だった一年目とは違って、この春からは全部二度目の四季。それなのに、去年と変わらずワクワクしているのはどうしてだろう。

 去年の春は、『Bar HIBIKI』のマスターであるオネエの響さん、『保護猫カフェ にくきゅう』のオーナー夫妻の姪であるミャオちゃん、一心さんの実家である寿司屋『あじさわ』の従業員で、一心さんの兄弟子だった司さんたちと一緒にお花見に行ったんだっけ。
 今年は、まごころ通りの新メンバーである、パティスリー『SWEET Clover』の店主・四葉さんも誘ってみんなでお花見ができたらいいな。

 思いついた楽しい計画に頬をほころばせながら手を動かしていると、入り口にかかった紺色の暖簾がはためいた。さりげなく、でも優しく通りすぎていく春風は一心さんみたいだなと、ふと思う。そして、そんなことを考える自分に赤面してしまった。

 一心さんへの気持ちが恋だと自覚したのは、半年ほど前のこと。ホワイトデーにもらったお花のカップケーキは、とっておきたい気持ちをこらえて、悪くならないうちにおいしくいただいた。ケーキについてきた花言葉のメッセージカードだけは、パスケースの内側に、隠すように大事にしまってある。もちろん、そんなことは一心さんには内緒だ。