「ミャオちゃん、おかえり。なにか収穫はあった?」

 実のところかなり期待していたのだが、ミャオちゃんは浮かない顔だ。屋台の中には入らずうつむいているので、私はミャオちゃんの前に立って手を取った。

「ミャオちゃん。どうしたの?」
「……おかしい」

ぼそっとつぶやかれた声には、切実な響きが混じっていた。

「公園にいる全部の猫に、捜してもらった。でも、たくまくんの言っていた外見の女の人は、いないって」
「え……?」

 ミャオちゃんが、私を見上げる。感情を表に出さないはずのミャオちゃんが泣き出しそうな顔をしていて、ドキッと心臓が鳴った。

「見落としがあったんじゃないの? それか、お客さま全員には目が届かなかったのかもよ」

 響さんが軽い感じでフォローを入れてくれるが、ミャオちゃんは首を横に振った。

「猫は人間のことをよく見てる。木に登ったりもできるから、見落としもないはず」
「つまり……どういうこと?」

 場の空気も、響さんの表情も硬くなる。そして――。

「ミャオが心配しているのは……。たくまくんのお母さんがすでに桜まつりの会場にいない、ということなんじゃないのか?」

 一心さんが、決定的な言葉を口にした。

「えっ……。だってそんな、それじゃ……」

 最悪の想像が頭をよぎる。不安なはずなのに、お行儀よく待っているたくまくんは、とてもいい子だ。こちらが質問をしても一生懸命返してくれるし、大切に育てられているんだなって感じていた。だから、たくまくんのお母さんがそんなことをするなんて思いたくない。