……ということは、ミャオちゃんは普段から猫ネットワークに参加したり、夜な夜な公園の猫集会に顔を出したりしているのだろうか、と余計なことを考える。でもそれでは、ミャオちゃんは〝猫っぽい女の子〟ではなく〝ほぼ猫〟になってしまう。

 いや、それとも、ミャオちゃんといちばん仲良しで、脱走名人でありボス猫でもある〝豆大福〟を通じて猫の情報をゲットしているのかも。うん、そっちのほうが正解だと思いたい。

「今のうちに、桜まつりの運営のほうに連絡しておくか……」

 私たちの会話を聞いていたらしい一心さんは、携帯電話を取り出して屋台の外でだれかと話している。通話し終えたあと、ふうと息を吐いて私と響さんを手招きした。

「どうだった? 一心ちゃん」
「屋台の責任者と話してみたんだが、今、ちょうど桜むすめのコンテストの最中らしくてな……。運営も人手が足りないらしく、迷子を預かっている余裕がないから、ここで保護していてもらえると助かると言われた。ただ、母親らしい人は捜してみるし、拡声器を使って呼びかけもしてくれるらしい」

 たくまくんを横目で見ながら話す一心さん。たくまくんに〝迷子〟や〝母親〟というワードを聞かせないよう気を遣っているのがわかる。

「それなら、すぐ見つかりそうね。お祭りって言ってもせいぜい公園の広さだし。ミャオも捜してくれてるんでしょ?」
「はい。ミャオちゃんというか、正確には猫ですけど」
「え、なにそれ」

 店番のため私たちに背中を向けていた響さんには、ミャオちゃんの言葉は断片的にしか聞こえていなかったらしい。説明をすると、目を丸くしていた。

「あの子、そんなことまでできるのね……。もうそれ、猫使いの域じゃない」

 感心しているのか呆気にとられているのかわからないようなため息と共に、メルヘンなワードが吐き出される。ミャオちゃんには、『使ってるんじゃなくて、友達』と怒られそうだけど。

「まあ、ちょうどお客さんの波も引いたところだし、気長に待ちましょ。みんな桜むすめのステージに行ってるのかもね」

 じっと座っているのに飽きてきた様子のたくまくんにあれこれ話しかけていると、ミャオちゃんが戻ってきた。