「あ、えっと……。私たちも食べましょうか」
「そうだな」

 だれに会話を振ったらいいのかわからなくて、黙々と牛串を頬張る。おいしいはずなのに、周りの空気を意識しているせいで味がわからない。

「あ、あのぅ……」

 そんなとき、屋台の近くでかぼそい声が響いた。

「ん?」

 しかし、みんなで周りを見回してみるけれど、屋台の近くに人はいない。

「おかしいわね。声が聞こえた気がしたんだけど」

 気のせい、のはずはない。さっきの声は、小さくて聞きとりにくくはあったが、かわいらしい幼い声だった。――もしかして。

「あっ、やっぱり」

 調理台から身を乗り出して見てみると、ちょうど死角になる位置に小さな男の子がいた。

「こんにちは。ひとりでお買い物かな?」

 声をかけると、男の子は背伸びして屋台の上を覗き込んだ。そして、『あれ?』という表情で首をひねる。そして、もじもじした様子でうつむいた。

「……迷子かもな」

 一心さんが、男の子に聞こえないように小さくつぶやく。ミャオちゃんが、ぴくりと肩を震わせた。

「係の人に、連絡したほうがいいんでしょうか……」
「でもこの公園って、迷子放送とかできるの?」

 大人たちがひそひそと相談している間に、ミャオちゃんは屋台を出て男の子の隣に並んでいた。

「こっち、屋台の中。いろんなジュース、ある」

 そう言って、手を伸ばす。男の子は迷っている雰囲気だったが、その短いセリフで意味は通じたのか、おそるおそるミャオちゃんの手を取った。