「いや、昼営業に間に合うようにすぐ帰るさ。ここのメニュー、全部三つずつくれ」
「三つ? 親父と母さんで、ふたつじゃないのか?」
「司にも買っていってやろうと思ってな。あいつも来たがっていたんだが、開店準備のために置いてきたから」
「そこは親父が残るべきだったんじゃないのか?」

 口ではそう言いつつも、一心さんはうれしそうだ。

「あら、このちらし寿司、素敵ね。この見た目、結さんが考えたんでしょう」

 一心さんの盛り付けを観察していたお母さんが、私に笑顔を向けた。

「はい。でも、どうしてわかったんですか?」
「一心にこんなかわいらしいセンスはないもの。本当に、結さんがいてくれてよかったわあ。これからもよろしくね」

 お母さんは会うたびに私のことを褒めてくれるが、過大評価されている気がしなくもない。

「はい、もちろんです。でも、いつも一心さんに助けられているのは私のほうなんですよ」

 謙遜ではなく、一心さんへの感謝を伝えたくてそう言ったのだが、すぐさま横から一心さんからの否定が飛んできた。

「そんなことはないだろう。俺のほうが――」
「いえ、そんなこと――」

 ねぎらい合戦になりかけていたら、響さんが私の頭を軽くチョップした。

「あんたたち、あたしの前でいちゃつくとはいい度胸ね!」

 条件反射的に、カアッと顔が熱くなる。

「いちゃついてない」
「いちゃついてません!」

 焦りながら抗議したら、一心さんと声が重なった。

「こりゃあ、響くんに一本取られたな」

 お父さんが豪快にはははと笑う。そのままご両親は、上機嫌で帰っていった。

響さんがおかしなことを言ったせいで、私と一心さんの間に気まずい空気が流れる。そんな中、今まで黙々とお手伝いをしていたミャオちゃんが私の服の袖を引っ張った。