「こころ食堂さんが屋台を出すってチラシで知って、今日は来てみたんです。無事に第一志望の大学に合格したこと、報告したくて」
「わあ、おめでとう!」
「そうか、がんばったな」

 私と一心さんが順番にお祝いを述べ、事情を知らない響さんとミャオちゃんも拍手をしてくれた。

 照れくさそうに頬をかく裕樹くん越しに、満開の桜が見える。サクラサク。うれしい報告を聞くのに、なんてぴったりな日なんだろう。

「ありがとうございます。これで僕も、おむすびさんの後輩ですね」

 裕樹くんの第一志望は地元にある国立大学で、私の母校だった。私はもうOBだけれど、知り合いが後輩になるのは素直にうれしい。

「合格発表が終わったあともいろいろと忙しくて、すぐに報告に来れずにすみません」
「ううん、わざわざ桜まつりにまで来てくれてありがとう」

 裕樹くんは、『お父さんへのお土産にする』と言って、ちらし寿司と桜餅をふたつずつ買っていってくれた。そんなところにも橘さんとの関係がうまくいっていることが垣間見えてうれしい。

 そのあとすぐ、一心さんのご両親も様子を見にきてくれた。

「一心、どうだ。繁盛しているか」
「うふふ。お父さんが気になるっていうから、様子を見に来ちゃったわ」

 いかにも〝親方〟という感じの強面でがっしりしたお父さんと、ほっそりして楚々とした、まとめ髪が似合うお母さん。あじさわでは板前服と着物姿だけど、今日はふたりともシャツにパンツのカジュアルな格好だ。

「親父、また店を休みにしてきたのか?」

 にこにこしているご両親とは対照的に、一心さんは心配そうに顔をしかめている。芋煮会をやったときも店を休みにして来てくれたから、気にしているのだろう。