屋台の設営はそつなく終わり、公園にも人が集まり始めた。

「今日の役割分担をもう一度確認しますね。私が接客とお会計で、一心さんが盛り付け。ミャオちゃんがお箸と料理を袋に入れてお客さまに渡す役ですね。カクテルは、そのまま響さんが手渡し」
「そうだ。よろしく頼む」

 桜餅はできあがっているのを包装するだけだし、ちらし寿司もさっき響さんに説明した通り、切ったり焼いたりする必要のある材料はすでに準備してある。酢飯は、保温効果のあるおひつの中だ。

「やること自体は、いつもと変わらないですね。そう考えると少し緊張がほぐれました」

 注文を取って、できあがった料理を運んで、お会計をして。いつも食堂でしていることと変わらない。人前で料理をするのも、寿司職人だった一心さんは慣れているだろうし。

「緊張していたのか」
「えっと、少し。お祭りの雰囲気って独特ですし」
「あたしは全然緊張してしていないわよ。たぶんミャオもそうなんじゃないかしら」

 きゅっと唇を引き結びながらも頬を上気させているミャオちゃんは、緊張というよりワクワクといった感じだ。そして、いくつもの修羅場を乗り越えていそうな響さんが緊張しないというのはなんだか納得。

「おむすび今、さもありなん、みたいなこと考えてるでしょ」
「えっ、どうしてわかるんですか」
「否定しなさいよ、そこは」

 響さんとわいわい言い合っているうちに、ひとり目のお客さまがやって来た。

「いらっしゃいませ~!」

 オネエ口調で挨拶する響さんに、中年夫婦のお客さまは目を丸くしていた。

「い、いらっしゃいませ!」

 出遅れたかたちで、私と一心さん、ミャオちゃんも声を出す。
 さくら祭りは始まったばかりだ。どれくらい忙しくなるか想像がつかないが、せいいっぱいがんばろう。

 そう決意して、私はお客さまに注文をたずねた。