「おむすび、これは……。あのときの」
匂いにつられて近寄ってきた一心さんが、ハッとする。
「はい。最初に出会った日に一心さんが作ってくれた、おばあちゃんの思い出料理です」
味噌とみりんを混ぜた、焼きおにぎり。あの日一心さんがこの味を再現してくれて、ご飯が食べられなくなった私を救ってくれた。
「よし、もういいかな」
おいしそうなきつね色になった、ふたつの焼きおにぎりをお皿に移す。
「一心さん、これを食べてくれませんか」
私の後ろで腕を組みながら、じっと完成するのを見ていた一心さんに、お皿を差し出す。
「俺が食べてもいいのか?」
「はい。これは、私が初めて食べた一心さんの料理で……。おばあちゃんとの思い出の味でもあるんですけど、私にとって、一心さんとの思い出の料理なんです」
一心さんは神妙に私の話を聞いたあと、「いただきます」とつぶやいて、焼きおにぎりを手に取った。
大きくひとくち頬張って、もぐもぐごくんと飲み込んでから、一言。
「もう、俺にとっても思い出の料理になっている」
照れたように微笑む一心さんに、私はめいっぱいの笑顔を返した。
やっと始まった、一心さんとの新しい関係。焦らず大事に育てていこう。そう、ご飯が炊けるのを見守るように。
料理も恋も、ゆっくり丁寧に。一年前に気づけた〝大好き〟の想いは、形を変えて今も私の胸の中にあるから。そして、これからもずっと。
お腹も心もいっぱいになる、この『こころ食堂』で一心さんとふたり、これからもたくさんの思い出を、ふっくら炊き上げていきたい。
匂いにつられて近寄ってきた一心さんが、ハッとする。
「はい。最初に出会った日に一心さんが作ってくれた、おばあちゃんの思い出料理です」
味噌とみりんを混ぜた、焼きおにぎり。あの日一心さんがこの味を再現してくれて、ご飯が食べられなくなった私を救ってくれた。
「よし、もういいかな」
おいしそうなきつね色になった、ふたつの焼きおにぎりをお皿に移す。
「一心さん、これを食べてくれませんか」
私の後ろで腕を組みながら、じっと完成するのを見ていた一心さんに、お皿を差し出す。
「俺が食べてもいいのか?」
「はい。これは、私が初めて食べた一心さんの料理で……。おばあちゃんとの思い出の味でもあるんですけど、私にとって、一心さんとの思い出の料理なんです」
一心さんは神妙に私の話を聞いたあと、「いただきます」とつぶやいて、焼きおにぎりを手に取った。
大きくひとくち頬張って、もぐもぐごくんと飲み込んでから、一言。
「もう、俺にとっても思い出の料理になっている」
照れたように微笑む一心さんに、私はめいっぱいの笑顔を返した。
やっと始まった、一心さんとの新しい関係。焦らず大事に育てていこう。そう、ご飯が炊けるのを見守るように。
料理も恋も、ゆっくり丁寧に。一年前に気づけた〝大好き〟の想いは、形を変えて今も私の胸の中にあるから。そして、これからもずっと。
お腹も心もいっぱいになる、この『こころ食堂』で一心さんとふたり、これからもたくさんの思い出を、ふっくら炊き上げていきたい。