「人がいないと、神秘的な気さえするな」
バーテンの制服を着た響さんに対して、一心さんはカットソーとパンツに食堂の紺色のエプロンという、いつもの私と同じような格好だ。
「わかります。神さまが宿っていそう」
私も、一心さんの言葉にうなずいた。鳥肌がたつのは、きっと美しすぎるから。人は美しい自然を見ると、神さまを感じるようにできているのかも。
「あ……っと」
桜に気を取られていたら、押していた台車が小石を踏んでがたんと揺れた。
「大丈夫か?」
自分だって大荷物を抱えているはずの一心さんが、さっと肩を支えてくれる。
「あ、はい……。すみません」
「気をつけなさいよ。ちらし寿司用の卵だって積んであるんでしょ、それ」
「ちらし寿司に使う錦糸卵は、すでに焼いて切ってタッパーに入れてある。ほかの材料も、屋台では盛り付けるだけだ」
「あら、そうなの。……ってそういう問題じゃないわよ。一心ちゃんはおむすびに甘いんだから」
「……そうか?」
「そうよ。気づいていないところがやっかいなのよね、これ」
ふたりのやりとりを聞きながら内心ドキドキしている私を、ミャオちゃんが神妙な表情でじっと見ていた。
「ミャオちゃん、どうかした?」
「なんでもない」
顔色を変えず、ガラガラと台車を押していくミャオちゃん。以前より表情豊かになったとはいえ、クールなのは相変わらずだ。
バーテンの制服を着た響さんに対して、一心さんはカットソーとパンツに食堂の紺色のエプロンという、いつもの私と同じような格好だ。
「わかります。神さまが宿っていそう」
私も、一心さんの言葉にうなずいた。鳥肌がたつのは、きっと美しすぎるから。人は美しい自然を見ると、神さまを感じるようにできているのかも。
「あ……っと」
桜に気を取られていたら、押していた台車が小石を踏んでがたんと揺れた。
「大丈夫か?」
自分だって大荷物を抱えているはずの一心さんが、さっと肩を支えてくれる。
「あ、はい……。すみません」
「気をつけなさいよ。ちらし寿司用の卵だって積んであるんでしょ、それ」
「ちらし寿司に使う錦糸卵は、すでに焼いて切ってタッパーに入れてある。ほかの材料も、屋台では盛り付けるだけだ」
「あら、そうなの。……ってそういう問題じゃないわよ。一心ちゃんはおむすびに甘いんだから」
「……そうか?」
「そうよ。気づいていないところがやっかいなのよね、これ」
ふたりのやりとりを聞きながら内心ドキドキしている私を、ミャオちゃんが神妙な表情でじっと見ていた。
「ミャオちゃん、どうかした?」
「なんでもない」
顔色を変えず、ガラガラと台車を押していくミャオちゃん。以前より表情豊かになったとはいえ、クールなのは相変わらずだ。