そのあと二回、おやっさんの店巡りに付き合い、暦は九月になった。
おやっさんは毎回、ランチ・おやつ・ディナーと詰め込んだ予定をたててきて、私と一心さんは毎回、メニュー選びとシェア方法に頭を悩ませた。そのぶん、リストには着々と、おやっさんが書き込んだ二重線が増えていく。
ごはんはおいしいし、いろんなお店に行けるのも楽しいし、おやっさんは喜んでくれる。休みが潰れるのは苦ではなかったので、なにも問題はないはずだった。
なのになんだが、おやっさんと会うたびに心がざわざわする。
詰まったスケジュールなのも、行きたい店がたくさんあるからだと思えばいいのに、どうしてだか、おやっさんがなにかに急いでいるように思えて仕方なかった。
そう、たとえば、生き急いでいるような……。
自分の考えに背筋が寒くなって、肩がぶるっと震えた。
「どうした、おむすび」
四回目の『食べたいものリスト』巡り。ランチに来た一軒目で、向かいの席に座った一心さんが怪訝な目を向ける。
「あ……、なんでもないです。ちょっと冷房が強くて」
そう告げて、冷房対策用に持ってきた薄手のカーディガンをはおる。
「女の人は冷え性だからねえ」
「そうか。温かい飲み物を頼むか?」
「いえ、大丈夫です」
今回のランチは、ふわふわオムレツの専門店。ひとりぶんに卵を何個も使った、スフレみたいな口溶けのオムレツが売りのお店だ。電車を使ってちょっと遠くまで来たのだが、ひとりだったら到底入れないような高級感があるお店だ。外観も内装もヨーロッパっぽくて、ゴージャス。
しばらく待って出てきたオムレツは、サイズが大きくてびっくりした。卵とバターでけっこうお腹にたまるし、食べられるだろうか。
ただ、味は本当においしい。口の中でしゅわっと溶けるオムレツが新食感。こんなに軽い食感なのに、お腹には重いなんて、なかなかうまくいかない。
おやっさんは毎回、ランチ・おやつ・ディナーと詰め込んだ予定をたててきて、私と一心さんは毎回、メニュー選びとシェア方法に頭を悩ませた。そのぶん、リストには着々と、おやっさんが書き込んだ二重線が増えていく。
ごはんはおいしいし、いろんなお店に行けるのも楽しいし、おやっさんは喜んでくれる。休みが潰れるのは苦ではなかったので、なにも問題はないはずだった。
なのになんだが、おやっさんと会うたびに心がざわざわする。
詰まったスケジュールなのも、行きたい店がたくさんあるからだと思えばいいのに、どうしてだか、おやっさんがなにかに急いでいるように思えて仕方なかった。
そう、たとえば、生き急いでいるような……。
自分の考えに背筋が寒くなって、肩がぶるっと震えた。
「どうした、おむすび」
四回目の『食べたいものリスト』巡り。ランチに来た一軒目で、向かいの席に座った一心さんが怪訝な目を向ける。
「あ……、なんでもないです。ちょっと冷房が強くて」
そう告げて、冷房対策用に持ってきた薄手のカーディガンをはおる。
「女の人は冷え性だからねえ」
「そうか。温かい飲み物を頼むか?」
「いえ、大丈夫です」
今回のランチは、ふわふわオムレツの専門店。ひとりぶんに卵を何個も使った、スフレみたいな口溶けのオムレツが売りのお店だ。電車を使ってちょっと遠くまで来たのだが、ひとりだったら到底入れないような高級感があるお店だ。外観も内装もヨーロッパっぽくて、ゴージャス。
しばらく待って出てきたオムレツは、サイズが大きくてびっくりした。卵とバターでけっこうお腹にたまるし、食べられるだろうか。
ただ、味は本当においしい。口の中でしゅわっと溶けるオムレツが新食感。こんなに軽い食感なのに、お腹には重いなんて、なかなかうまくいかない。