お盆も終わり、八月も中盤に入り、じりじりと焦げ付くような暑さもやわらいできた今日この頃。とうとう、ミャオちゃんの書いた小説が発売されることになった。三月に書籍化の話を聞いてから、五ヵ月も経っている。
 すぐに発売されると思っていた私は、出版されるまでにこんなに時間がかかるのにびっくりした。ミャオちゃんいわく、内容を改稿したり、文章を校正したりするのに数ヶ月かかるのだそうだ。書き終えてからそんなに直すことにも、びっくりだ。

 私とミャオちゃんは、発売日の今日、近くの本屋さんまで連れたって来ていた。
 しかしミャオちゃんの足は、本屋さんの入り口でぴたりと止まってしまった。

「ミャオちゃん、どうしたの?」

 さっきまでは高揚した表情で、早足で歩いていたのに。今は、唇をぎゅっと引き結んで、こわばった顔をしている。

「……急に、きんちょうした」

 いよいよこれから、本屋さんに自分の本が並んでいるのを見る、というところで、急に実感がわいてきたのだろう。私も大事な場面では緊張してしまうタイプなので、ミャオちゃんの気持ちはよくわかる。

「大丈夫、本屋さんに並んでいるのを見るだけだよ。今までミャオちゃんががんばってきたんだから、今日はうれしいだけのごほうびの日だと思おう?」
「……うん」

 ミャオちゃんが深呼吸しながらうなずいたので、私たちは書店の中に足を踏み入れた。
 新刊台や文房具コーナーを抜けて、携帯小説が並んでいる棚に向かう。

「えーっと」

 ミャオちゃんの小説のタイトルとペンネームを頭の中で唱えながら探していると、隣でミャオちゃんが息をのむ音がした。

「……あった」