ね? というように、純也さんは愛美を見た。

「……はい、そうなんです。純也さんもわたしのこと好きだったみたいで。手は……出されてない……と思います。キス……したくらいで?」

 愛美は純也さんの視線に圧を感じたわけではないけれど、「話していいのかなぁ」と思いながら、しどろもどろに多恵さんに話した。

「あらまあ、そうだったんですか! よかったわねぇ、愛美ちゃん。個人的に連絡を取り合うようになったって言ってたのは、そういうことだったんですねぇ……」

「うん。僕はね、彼女が未成年ってことや、十三歳も年が離れてることもあって、告白するのをためらってたんだけど。彼女が『それでもいい』って言ってくれたから」

 純也さんは純也さんで悩んでいたんだと、愛美は昨晩知った。だから、「それでもいい」と言った愛美の言葉がどれだけ彼の救いになったか、彼女には分かる。

「ええ、ええ。キスなんて手を出したうちには入りません! 法に触れるようなことさえしなきゃいいんです。その代わり坊っちゃん、愛美ちゃんを泣かせるようなことがあったら、その時は私が許しませんよ!」

「分かってるよ。っていうか、多恵さんは一体どっちの味方なんだ」

「多恵さん、わたしのお母さんみたい」

 多恵さんの熱のこもった演説に純也さんは呆れ、愛美は笑った。
 これじゃあまるで、娘に彼氏ができた時の母親みたいだ。さしずめ、純也さんがその彼氏というところか(まあ、実際に彼氏になったのだけれど)。

「それより多恵さん、早く朝食にしてくれよ。僕も朝寝坊して、今すごく腹ペコなんだから」

「わたしも。お手伝いすることがあったら、何でも言って下さい」

「はいはい。――あ、愛美ちゃんは座ってていいわよ。すぐできますからね」

 多恵さんがそう言うので、愛美は素直にその言葉通りにした。他の人たちの朝食はもう済んでいるようで、今テーブルについているのは愛美と純也さんの二人だけだ。