****
――茗倫女子大付属高校は〝名門〟というだけのことはあって、敷地だけでも相当な広さを誇っている。愛美が通っていた地元の小中学校や、それこそ〈わかば園〉とは比べものにならない。
「わあ……! 大きい!」
その立派な門を一歩くぐるなり、愛美は歓声を上げた。
敷地内には、大きな建物がいくつも建てられている。高校と大学の校舎に体育館、図書館に付属病院まである。さすがは大学付属だ。
そして、愛美がこれから生活を送る〈双葉寮〉も――。
「こんにちは! ……あの、これからお世話になる相川愛美です。よろしくお願いします」
寮監の先生と思われる女性に、愛美はおそるおそる声をかけてみる。――果たして、これが寮に入る新入生の挨拶として正しいのかは彼女にも分からないけれど。
「はい、相川愛美さんね。ご入学おめでとうございます。――これ、校章と部屋割り表ね」
「ありがとうございます。――えーっと、わたしの部屋は、と。……ん?」
渡された部屋割り表でさっそく自分の部屋番号を確かめた愛美は、そこに自分の名前しか載っていないことに驚く。
「わたし……、一人部屋なんですか?」
「ええ。入学が決まった時に、保護者の方からご要望があったそうよ。あなたには一人部屋を与えてやってくれ、って」