「ああ、コレか? 差し入れに、横浜駅の駅前のパティスリーで買ってきたチョコレートケーキだよ。ちょうどいい。愛美ちゃんの全快祝いにもなるかな?」

 純也がいうパティスリーは、ちょっと値の張るケーキやスイーツが売られているお店で、中にはカフェも併設されている。でも、高級店のイメージが強いので、女子高生にはなかなか入りづらいお店でもある。
 ……それはさておき。

「えっ、チョコレートケーキ!? ありがとうございますっ!」

 チョコと聞いて、さやかが目を輝かせたのはいうまでもない。

「ねえ叔父さま、まだお時間あります? でしたら、私たちのお部屋で一緒にお茶にしません? そのケーキを頂きながら」

「うん、まあ……大丈夫だけど。愛美ちゃんはどうかな?」

「ああ、それいいねえ☆ ね、愛美?」

「ええっ!?」

 純也さんとさやかの二人に畳みかけられた愛美は、返事に困ってしまう。
 別にイヤではない。むしろ嬉しい。けれど、好きな人と何を話していいのか分からない。
 ……というか、さやかも珠莉も、面白がってけしかけているとしか思えない。のはおいておいて。

「…………ハイ。わたしも一緒にお茶したいです」

 多分まだ真っ赤な顔をしたまま、愛美も頷いた。

「ホントにいいのかい? イヤならムリにとは言わないけど――」

「いえ、大丈夫です。イヤなんかじゃないです。むしろ……嬉しいです」

 ちょっと食い気味に言って、愛美はやっと純也さんにはにかんで見せた。

「そっか……、よかった。でも、寮監の先生からは何も言われないのかな?」

「大丈夫だと思いますよ。心の広い人ですから」

 純也さんの疑問には、さやかが答えた。

「お帰りなさい。――あら。どうも」

 今日も笑顔で三人を迎えた晴美さんは、純也さんの姿を認めて目を瞠った。

「こんにちは。その節はどうも。――これから、姪たちの部屋でお茶会をしたいんですが、構いませんか?」