「ぐ……しかもこの銃弾は…………」
「フハハ、痛かろう?」

 夜叉の肩に咲いた血の花。そこに三成は中指と人差し指を突っ込んだ。

「ウギャアァァアアアアッ!!!」

 夜叉の叫びが夜の川にこだまする。それを全く意に介さず、三成は二本の指を夜叉の肩の中で動かした。

「おっ、あったあった」
「ぐ……ぎぃ……き、貴様なにを……」
「ほら見たまえ」

 三成は銃創から指を引き抜いた。その間には半分潰れた金属の破片が挟まれている。

「本来、鉄砲の弾は鉛を使うのだが、これは石見(いわみ)の銀を用いた特別製だ。伴天連の退魔師が銀の剣や弾を使うと聞いて、私も試したのだ。もちろん仕掛けはそれだけではない」

 夜叉の顔に潰れた弾丸を近づける。

「ほらわかるか? 弾にはこの寺の僧に、経文を書き込ませておる。この寺の本尊は弘法大師に縁があってな。その法力は折り紙付きというわけだ」

 三成は得意げに語り続けた。

「東西の退魔の技術融合!これこそが石田流軍配術の真髄なり。もともと貴様は、"木"を拠り所とする物の怪、"金"より産み出した鉄砲玉が有効だと踏んでいたけど、この特製銀弾の効果はてきめんだったようだな」
「……気づいておったのか?」

 愕然とする夜叉の顔を見て三成はニヤリと笑う。

「当たり前だろ。その程度のこと、ハナから承知さ。炎に強いことも含めてな!」