翌週の月曜日。由良は出社すると、目を伏せながら自分のデスクへ向かった。途中、プログラマー部の横を通るとき、堀部の後ろ姿が見えたので、足を早める。

 やっちまった……。土曜日の昼、由良は自室のベッドの上で激しく後悔した。明確な記憶が残っているのは堀部と焼き鳥屋に入った所まで。その後、どんな事を話したかおぼろげにしか覚えていない。そして新江古田のアパートまでどう帰ったかも……。
 財布を見ると一万円札が消えていたので、多分タクシーに乗ったんだとは思う。が、記憶はまるで無い。目が覚めると、化粧は落とさず、上半身はニットも脱がず、なのに下半身は下着一枚だけという滅茶苦茶な格好でベッドに横たわっていた。

 堀部さんに失礼なこと言わなかっただろうか……? 出勤中、その事で頭がいっぱいだった。会社のグチをひたすらまくし立てたのは、何となく覚えている。堀部の地雷を2つや3つ踏んでいてもおかしくない。言うだけならまだしも、態度や行動で迷惑かけていたら目も当てられない。


 ピコンッ


 PCを立ち上げた直語、チャットツールにメッセージが入ってきた。企画部やフェンリスプロジェクトの共用チャンネルからではない。社員個人からのダイレクトメッセージ。相手は……あーヤバイ……。案の定、堀部からだった。

〈おはよう。金曜ちゃんと帰れた? タクシーに乗せるの大変だったんだけど…😅〉

 はぁ~死にたい! その文面だけで全てを察する。だいぶ迷惑かけたらしい……。

〈ごめんなさいっ💦 実は全く記憶がのこってなくて…😰 ともかくご迷惑おかけしたことは理解しました。ほんとうに申し訳ないです🙏💦💦💦〉

〈いやいや、いいよ笑 俺も楽しかったし。それよりさ〉

 その後、会話ウィンドウに表示される文字列は思ってもないものだった。

〈あの時、話してた大星さんの企画、よかったら見せてよ〉