「つまり、僕にはもう企画に関わるなと?」
「そうは言ってません。関わり方を少しだけ変えて欲しいんです」
「少しだけ? 企画の基礎を作ろうってときに、そこに口を出すなってのは、関わるなって言ってるようなものじゃないか」

 昼休み。会社近くの喫茶店で、由良は斧田と対峙していた。堀部も一緒に行くと言ってくれたけど、断った。2対1はフェアじゃない。そんな状況で斧田を納得させても、それは心からのものにならない。

「斧田さんとアタシには、ひとつ大きな食い違いがあります。アタシは今、企画の基礎を作ろうなんて思ってません」
「は?」
「企画の基礎はとっくに出来上がってます。アタシの中で変えようもないくらいしっかりと」
「それは大星さんがそう思ってるだけだ。 この前のブレストもそうだったでしょ? ジャンルですらあやふやな状態じゃ……」
「それでもやりたいことは変わりません。絶対に変えません!」

 斧田の言葉が終わるよりも早く、由良は言い切った。

「斧田さんの中では、まだジャンルも方向性も、無限の可能性があるのかもしれません。けど、アタシにとっての大星プランはその段階を過ぎているんです」

 続けて由良は頭を下げる。

「そこに認識の違いがあったのなら、それはアタシの説明不足です。スミマセン!!」
「いや、そんなことされてもさ……結局は『全てオレサマに従え』ってことだろ。横暴だよ。まるで誰かさんのようだ!」
「いいえ。アタシが守るのは最初の一歩だけです。そこから先は皆さんに頼るしかありません」

 由良はバッグに入れていたファイルを取りだして広げた。