話し終えるころには、真昼だというのに白い息が口からこぼれていた。
 まるで真冬の公園にいるみたいに寒い。小刻みに震える体を両腕で抱く私に、シロはやっぱり涙をこぼしている。

「ひどい。その人、ひどいよ」
「やっぱりそう思う?」
「だって、もうすぐ会えなくなるのに告白するなんて、あんまりだよ」

 シロはやさしいな。私の気持ちを代弁して、涙まで流してくれている。
 私には言えなかったし、できなかったことばかり。

「でも、うれしかったんだ。好きだった人に好きだと言ってもらえたことが、本当にうれしかった」
「それでつき合うことになったの?」
「ううん。返事をする前に、死んじゃったから……」
「あ、だから『恋人になるはずだった人』って言ってたんだ」

 話がつながったのだろう、シロは目を丸くしている。
 うれしかったのに、あのとき私は返事を保留にしてしまった。
 この町からいなくなってしまう侑弥とつき合ったりしたら、絶対に苦しくなるってわかっていたから。

「ねえ、クロ。侑弥に会うことが未練だとしたら、告白の返事をちゃんとするってことだよね?」
「知らん」

 あくまでそっけないスタンスを崩さないクロ。
 果たしてそんな勇気が出るだろうか……。

 告白の返事をすることが未練だったとしたら、答えはいやおうなしにNOになってしまうだろう。だって、もう彼の恋人にはなれないのだから。

 クロがゴホンと咳ばらいをした。

「しかし、(まれ)なケースでは、相手も幽霊だったというのもあるぞ」
「え?」
「その侑弥ってのが死んだ人間ってことだ。そもそもここでしか会ったことがないんだろう?」
「そうだけど……」
「だったら侑弥が死んでいることを願うんだな」

 それはいくらなんでも非現実すぎる。
 って、今の状況も同じか……。
 たしかに侑弥は不思議な人だった。向こうも同じで、お互いに幽霊疑惑さえ抱いたほどだった。

 侑弥が幽霊だったら私はうれしいのかな……?

「そんなふうには願えないよ。だって、自分が死んでしまったとしても侑弥には生きていてほしいもん」
「そっか。まあ、案内したリストにはないから生きているんだろうけどな」
「なによそれ。だったらそんな可能性の話をしないでよ」