「急なんだね」
なんとかそう言えた。
泣けない自分をこれほどありがたいと思ったことはない。
侑弥はきっと、私が平気な顔をしているように見えているはず。
「運命を呪うよ。昔から転校ばっかりだから仕方ない。そのくせ親は、『家族は一緒にいるべきだ』って当然のように言うんだぜ」
夕焼けが消えていく。紫色を強めていく空には、名残惜しそうにまだ白い雲が流れている。
――侑弥がいなくなる。
私の片想いは、これで終わりを迎えるのかな……。
いや、きっと違う。
これからはひとりで、ここで彼のことを想い続けるんだ。
やだな。恋ってこんなにも苦しいばっかりなんだ……。
だとしたら、もっと自分から話しかければよかった。そうすれば、侑弥の悪い部分も知れただろうし、嫌いになれたかもしれない。
「もうひとつのほうなんだけど」
侑弥の声に思考を中断した。
そうだった、もうひとつ、もっと悪いニュースがあるんだった。
「うん」
うなずきながら心の耳を塞ぐ。もうこれ以上、聞きたくないよ。
侑弥はベンチの前にある手すりに進むと腰をおろした。暗くなっていく世界では、彼がどんな表情をしているのかわからない。
数秒の沈黙のあと、侑弥は言った。
「七海のことが、好きなんだ」
*
なんとかそう言えた。
泣けない自分をこれほどありがたいと思ったことはない。
侑弥はきっと、私が平気な顔をしているように見えているはず。
「運命を呪うよ。昔から転校ばっかりだから仕方ない。そのくせ親は、『家族は一緒にいるべきだ』って当然のように言うんだぜ」
夕焼けが消えていく。紫色を強めていく空には、名残惜しそうにまだ白い雲が流れている。
――侑弥がいなくなる。
私の片想いは、これで終わりを迎えるのかな……。
いや、きっと違う。
これからはひとりで、ここで彼のことを想い続けるんだ。
やだな。恋ってこんなにも苦しいばっかりなんだ……。
だとしたら、もっと自分から話しかければよかった。そうすれば、侑弥の悪い部分も知れただろうし、嫌いになれたかもしれない。
「もうひとつのほうなんだけど」
侑弥の声に思考を中断した。
そうだった、もうひとつ、もっと悪いニュースがあるんだった。
「うん」
うなずきながら心の耳を塞ぐ。もうこれ以上、聞きたくないよ。
侑弥はベンチの前にある手すりに進むと腰をおろした。暗くなっていく世界では、彼がどんな表情をしているのかわからない。
数秒の沈黙のあと、侑弥は言った。
「七海のことが、好きなんだ」
*